2.1 DTMの幕開け MIDI、VST等

本日も「音なLABO」へようこそ


コンピュータモデリングの時代と銘打ちまして、シンセサイザーの歴史ソフトウェア編、第1回目となります。

前回までは、シンセサイザーの歴史のハードウェア編をお送りいたしました。

1.1 テルミン~ムーグ
1.2 発音方式の違いと比較 ローズ、ウーリツアー、ハモンド
1.3 日本3大メーカのそれぞれ DX7、M1、TR808

今回は、DTM時代の新しいシンセサイザーの形について、考察していきます。

 

1 デジタル以降のシンセサイザーの流れ

 

まず、デジタル以降のシンセサイザーの技術に関してまとめましょう。

音源:デジタルによって、幅広い倍音成分を持ったサウンドが可能となった(FM音源
記憶媒体(特にハードディスク)の進歩により音そのものを記憶することが可能となった(PCM音源)
自動演奏:シーケンスの搭載により、簡易化される(前史では自動ピアノなど大掛かりでな装置が必要であった)
制御系:パラメーターを保存(前史ではコードを繋ぐ、つまみを回すなどが必要であった)することで、瞬時に設定を読み出すことが可能となった。
録音:CD技術などの発展により、音の記録が可能となった。

そして、上記の役割を一台のシンセサイザーに集約させた「ワークステーション」という機器が考案されました。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/5e/KORG_OASYS.jpg/240px-KORG_OASYS.jpg
オアシス Wikipediaより
※2005年発売のワークステーション最高峰の一つ。Pentium4を搭載し、Linux上で動くというもはやコンピュータ。

 

古くは、シンクラビアが元祖と言われ、概念自体はフェアライトCMI、RCAミュージック・シンセサイザーの時代から存在していました。

2 そしてコンピュータへ


前述のように、技術の革新と共にデジタル化がもたらしたシンセサイザーの発展は、コンピュータ上へと移行していきます。
いよいよ本格的なソフトウェア化の流れが確立されていきます。

https://cdn-www.avid.com/-/media/avid/images/hero-products/pro-tools-2020/folder-tracks-temp-image.png?v=20200109160050

Pro Tools Avid Technology, Inc.オフィシャルより
※現在、レコーディング用としてDAW(Digital Audio Workstation)Pro Toolsを用いないスタジオはない。

そして、誰もがコンピュータを使って音楽を作ることができる「DTM(Desktop Music)」の時代が到来しました。

ここで、DTMシンセサイザーの関りを説明する上で重要な概念を下記に説明いたします。

3 MIDI


MIDI(Musical Instruments Digital Interface)は、1981年に策定された電子楽器間の伝送ルールを規定した世界共通の規格となります。
例として、2台の鍵盤付きシンセサイザをMIDI伝送ケーブルで繋げてみましょう。この状態で、一方の鍵盤を押下してみます。するもう一方のシンセサイザーからも音が出てきます。
これは、一つの鍵盤を元に二つのシンセサイザーの音源を操作したことになります。

この時、押下したシンセサイザーからは「どの音を押したのか」、「どれぐらいの強さで押したのか」といった情報が、もう一方のシンセサイザーに伝わります。
(もう一つ付け加えると「今も押され続けているのか」という情報も含みます。)
そして、伝えられた側のシンセサイザーの音源から音が生成されます。

つまり、鍵盤(キーボード)は一つ、音源を複数もつシンセサイザーと、制御方法の確立を担っているのがMIDIということになります。
この規格にのっとり作られたのがローランドのGS音源、これに対抗して作られたヤマハXG音源となります。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/dd/Roland_SC-88Pro.jpg/300px-Roland_SC-88Pro.jpg
GS音源 Wikipediaより
※GS音源、XG音源共に今ではビンテージ機材となってしまいましたが、愛用者も少なくありません。

もちろんMIDIは電子規格としての特性を持ち合わせていた為、コンピュータ上でも取り扱い易いものでした。
今でこそMIDI伝送ケーブルで繋がれる機会は減りましたが、コンピューター内部での情報伝達手段として現在も使用されています。


※現在ではnanoKONTROLなどのMIDIコントローラーは、コンピュータとUSBもしくはIEEE 1394FireWireなど)で繋がれているが、伝達情報自体はMIDIの規格にのっとった信号が送られている。

やがて、音源自体はコンピュータ上に置かれ、現在の形へと変貌を遂げていきます。

4 VST


VST(Virtual Studio Technology)は、Steinberg社によって開発された規格の一つとなっています。
(他にも、アップルが開発したAUマイクロソフトが開発したDXiなどが存在するが、現行で最も普及しているのがVSTということになります。)
この規格は、ソフトシンセ、エフェクタプラグイン、波形編集ソフト、DAWをリアルタイムで繋ぐことに成功しました。
言い換えると、DAWの中で様々なシンセサイザー、エフェクト、波形編集(サンプリングした音に音響処理を施すこと)を扱える技術ということになります。

http://www.audionerdz.nl/picz/mover.gif
ディレイラマ AudioNerdzオフィシャルより
※お経風シンセ+ディレイエフェクトという変わり種のVSTプラグイン。後の初音ミクを予言していたのか?

 

パッケージソフトシェアウェア、フリーウェアの形式で販売、配布されており特にフリーでは個性的なアイディアによるプラグインが開発されてきました。

まとめ

 

このように、シンセサイザーは多くの技術発展に支えられ、その形を変えて今日ではソフトウェアとして広くコンポーザーやレコーディングエンジニアにまで愛されることとなりました。