2.2 VA音源、物理モデリングへ

本日も「音なLABO」へようこそ

コンピュータモデリングの時代と銘打ちまして、シンセサイザーの歴史ソフトウェア編、第2回目となります。

前回は、コンピュータ上にプログラムとして置き換わりゆくシンセサイザーの形をご紹介しました。

2.1 DTMの幕開け MIDI、VST等

今回は、シンセサイザーの音響的な進展について、考察していきます。


1 VA音源 物理モデリング


VA(Virtual Acoustic)音源とは、ヤマハによって提唱された音源方式となります。
(現在では「物理モデル音源」と呼ばれることの方が一般的かもしれません。)
PCM音源の弱点である、持続音が単調となってしまうことに着目し、より現実的な音を再現することに開発の端を発しました。
(特に、弦楽器の揺らぎや管楽器の息づかいなど音の細かいニュアンスを伝える為)
そこで、物理法則を元に音のモデリングを行うこととなりました。
(弦の運動法則をシュミレートし音に反映させる、ブレスコントローラなどのセンサーを用いてパラメーターを制御するなど)

https://data.yamaha.com/jp_content/cs_image/synth_40th/ind_photo_vl1.jpg
VL1 ヤマハオフィシャルより
ヤマハはVA音源のシンセサイザーとして1993年にVL1、1994年にVP1を発売しました。

 

こうして、当初の目的であるより楽器に近いリアルなサウンドの構築に成功しました。

一方で、この物理法則のシュミレートは「超現実」の音を生み出すきっかけとなりました。
例えば、「10mの長さのサックス」「体育館ほどの共鳴胴をもつバイオリン」などがあります。
材質が高価であったり、再現が不可能な楽器を、電子回路の中でバーチャルに作り出すことができるようになったのです。
これは現代にまでつながる、音の探究者たちへの更なる刺激を与える発明となりました。

 

2 バーチャルアナログ音源

 

バーチャルアナログ音源は、デジタル信号処理を用いて、アナログシンセサイザーを再現する方式です。
VA音源とは明確に区別されており、あくまで電子回路のモデリングを行う形式となっています。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/3b/Clavia_Nord_Lead_2x.jpg/300px-Clavia_Nord_Lead_2x.jpg
Nord Lead Wikipediaより
※1995年にクラビアより発売。もっとも有名なバーチャルアナログ音源のシンセサイザーの一つである。

 

このようにアナログシンセサイザーの再評価に一役買いました。

 

3 ※補足 DSPについて

DSP(digital signal processor)の発明により、電子回路上でシグナル(いわゆるサイン派)を生成し、デジタル信号として扱うことができるようになりました。
これは、複雑なシュミレーションや、高容量なモデリングを実現する為に必須な技術となります。
(なぜデジタル上でシンセサイザーが動くのか、コンピュータで音楽をプログラムするとはといったことに興味がある方は知っておいて損はありません。)

まとめ


やがて、上記のような音源方式はコンピュータ上で様々なサウンドを再現する為の礎となり、現代でも生き続けていきます。
次回は、複雑化する現代の音響、そしてこれからの音の可能性に関して、触れていきたいと思います。